【犬の保育園③】警戒心は“悪いもの”ではない?生存に必要な能力と「安心の積み重ね」【犬のしつけ新常識 Vol.20】

犬のしつけ新常識

「子犬の頃はあんなにフレンドリーだったのに、最近急に吠えるようになって……」前回の記事を読んで、愛犬の変化に不安を感じた飼い主さんもいらっしゃるかもしれません。ですが、安心してください。実はこの“警戒心”そのものは、決して悪いものではありません。

記事監修:藤田かつとし先生(CPDT-KA)

この記事は、動物福祉(アニマルウェルフェア)に基づいた科学적ドッグトレーニングの専門家、藤田かつとし先生にご監修いただきました。

藤田かつとし先生プロフィール

1999年、山口県萩市でトリミングサロンを開業。動物愛護活動を通じて「不幸な動物を減らすには?」という課題に向き合い、ドイツ・ベルリンへ渡航。そこで、日本とドイツにおける犬との暮らし方の違いに衝撃を受け、「叱らないトレーニング」の重要性を学ぶ。2017年に犬の保育園&トレーニング施設「Happy Wan 山口」開設。世界基準のドッグトレーナー資格「CPDT-KA」を取得。応用行動分析学(ABA)に基づき、叱らずに「良い行動を引き出す」指導を実践。2025年より「犬の保育園 ハッピーランドハレルヤ」園長に就任。科学的根拠に基づいたアプローチで、飼い主と愛犬が心から楽しみ、幸せを感じられる環境づくりをリードしている。

保育園って何するところ? その3:警戒心は“悪いもの”ではない

【よくあるご質問・お悩み】
「成長するにつれて、外の音や他人に吠えるようになった」
「最初は平気だったお手入れやハーネスを、だんだん嫌がるようになった」
愛犬のこうした変化に悩む飼い主さんはとても多いです。しかし、この警戒心はすべての動物にとって「生き残るために必要な能力」なのです。

警戒心がないと生き残れない

例えば、草むらがガサガサ鳴ったら「何かいるかもしれない」と警戒し、高い場所から下を見たら「落ちるかもしれない」と慎重になる。そうやって危険を予測するからこそ、動物は自分の身を守ることができます。

つまり警戒心とは、“生存のための正常な反応”なのです。

confederation人と暮らす中では悩みの種にもなる

ただ、この正常な警戒心が、人間社会での暮らしの中で「問題行動」として扱われてしまうことがあります。

犬が不安や嫌悪感を感じたとき、彼らは言葉の代わりに以下のような行動で表現します。

  • 吠える
  • 威嚇する
  • 噛む

一見すると困った行動に見えますが、これらは恐怖や不安という感情から突き動かされていることが少なくありません。(このあたりは、また後のシリーズで詳しく書こうと思います)

■やっかいなのは「嫌な経験」の学習スピード

自然界で生き残るための仕組みとして、もうひとつ知っておくべき特徴があります。それは、「強い嫌悪感や恐怖は、たった一回でも学習されてしまう」ということです。

これは人間でもイメージしやすいかもしれません。安心感というのは、何度も接して安全を確認しながら時間をかけて少しずつ作られていくものです。一方で、強い不安・恐怖・痛みは、その瞬間に強烈な印象として残ります。

危険を一瞬で学習できなければ命に関わるため、動物としては非常に合理的で正しい反応なのですが、これが現代の飼育環境では裏目に出てしまうのです。

■何をどれだけ嫌がるかは、それぞれ違う

もちろん、「何をどれくらい嫌だと感じるか」の基準は、犬によって大きく違います。

  • その時の状況
  • 刺激の強さ
  • 過去の経験
  • 性格や気質

これらが複雑に絡み合うため、実際には「その時のその子」を見なければ分からない部分がたくさんあります。

心のキャパシティーとの関係

(この「嫌悪の感じやすさ」は、前回までにお話ししてきた「心のキャパシティー(器)」とも深く関係しています。

経験してこなかった未知のことほど、初めて遭遇したときに警戒心が出やすくなります。だからこそ、以下のような変化が日常でよく起こるのです。

■日常でよくある変化の例

  • 子犬の頃はあまり吠えなかったのに、成長するにつれて吠えるようになった
  • 最初は平気だったお手入れやハーネスも、だんだん嫌がるようになった

■ほいくえんで大切にしていること

だからこそ、ほいくえんでは「ただ無理やり慣れさせる」ようなトレーニングはしません。大切なのは、“嫌悪感を強く作らない形で経験を積むこと”です。

安心感を少しずつ積み重ねながら、心のキャパシティーを広げていく。その丁寧な積み重ねこそが、将来の問題行動の予防にもつながっていきます。

■最後に

愛犬の警戒心に気づいたら、「ダメなこと」と叱るのではなく、「今、この子は一生懸命身を守ろうとしているんだな」と受け止めてあげてください。その不安を安心に変えていくのが、私たちプロの役割であり、飼い主さんと一緒に取り組みたい課題です。

まだまだ、つづく。


▶︎ 愛犬との絆が深まる「犬のしつけ新常識」をもっと見る