【Lifestyle with Dogs】File5 松浦奈津子|気づけば、50キロになっていた ――ロットワイラーとの暮らしは、“生活”も“価値観”も変えていった 第4話

Lifestyle with Dogs

HANAは、本当にあっという間に大きくなった。
朝ハーネスをつけたのに、夜にはもうきつくなっている。
そんな感覚だった。
気づけば、ハーネスのサイズを8回くらい変えていた。
最初は10キロくらいだったのに、あっという間に30キロを超えていった。
でも不思議なことに、毎日少しずつ増えるから、普通に抱っこできてしまう。
その頃、私は二階に住んでいたので、毎日HANAを抱えて階段を上り下りしていた。
今思うと、完全に米俵だったと思う(笑)
でも、ある日、階段で転んだ。
大きな怪我はなかった。
でもその瞬間、
「あ、これは危ない」
と思った。
大型犬と暮らすということは、“気合い”だけではどうにもならない。
その時初めて、私は一階への引っ越しを決めた。

首輪しか知らなかった

今思うと、私は本当に犬のことを知らなかった。
犬といえば、首輪。
そのくらいの知識だった。
でも、トレーナーの先生に、ハーネスを教えてもらった。
「人も、首を引っ張られたら痛いですよね」
そう言われた時、
「たしかに……」
と思った。
犬も同じなんだ、と。
教えてもらったのは、体への負担が少ない、ハーネスの“進化系”みたいなものだった。
実際に使ってみると、HANAもすごく楽そうだった。
大型犬だからこそ、こういうことが大事なんだと知った。

おしゃれなネックレスだと思っていた

最初、HANAの首輪を探していた時のことだった。
海外のロットワイラーたちを見ていると、みんなチェーンのネックレスみたいなものをつけていた。
黒い体に銀のチェーン。
ものすごくかっこよかった。
だから私も、よくわからないまま買った。
そして、それをつけて保育園へ行った時、先生に言われた。

「これ、チョークチェーンですね」
私はその時、“チョークチェーン”が何なのか、まったく知らなかった。
話を聞くと、それは犬が強く引っ張った時、首が締まる構造になっているものだった。
昔は、厳しいしつけでも使われていたらしい。
私はびっくりした。
完全に“おしゃれなネックレス”だと思っていたからだ。
しかも、ロットワイラーにつけると本当に似合う。
でも先生は、
「絶対ダメです」
とは言わなかった。

私が、
「50キロになるロットワイラーなので、お守りみたいな感じで……」
と言うと、
笑いながら、
「ありですね(笑)」
と言った。
その感じが、私はすごく好きだった。
アニマルウェルフェアというと、理想論に聞こえることもある。
でも、この先生は違った。
ちゃんと現実も見ている。
大型犬と暮らす怖さも知っている。
だから私は、信頼できた。
しかも今、そのチョークチェーンが意外なところで役に立っている。
HANAは、あの“じゃらじゃら音”があまり好きではない。
だから、悪いことをした時、私が
「あーあー」
と言いながら、じゃらじゃらすると、すぐに言うことを聞く。
この“音作戦”、実はかなり便利だった。
力ではなく、音。
怒鳴るのではなく、合図。
そんなところにも、少しずつ“共に暮らす感覚”が生まれていった。

「家族には、本当にいいものを食べてほしい」

HANAと暮らし始めてから、私は“犬のごはん”に対する感覚も変わっていった。
昔は、
“ペットフードは、ペットフード”
という時代があったのだと思う。
人が食べるものとは別。
極端に言えば、
“犬だからこれでいい”
という考え方も、まだ残っていた。
でも、HANAを迎えて思った。
この子は、家族だ。
毎日一緒に生き、
同じ空間で眠り、
嬉しい時は笑い、
不安な時は寄り添ってくれる。
そんな存在に、“適当なもの”なんて食べさせたくなかった。

「4粒事件」が、すべての始まりだった

ある日、朝おやつとして食べたフードが、夜、HANAがむせた瞬間に、そのままの形で4粒出てきた。
私は本当に衝撃を受けた。
「え……消化してない……?」
胃の中で溶けていない。
これって、本当に体にいいのだろうか。
大型犬と暮らしていると、“毎日のうんち”がどれだけ大事かわかる。
下痢をしないこと。
きれいな便が出ること。
それは、健康そのものだった。
そこから私は、“胃の中でちゃんと溶けるフード”を、本気で考えるようになった。

ミレワンは、「日本の食文化」から生まれた

だから原材料にも、とことんこだわった。
私たちが選んだのは、日本の雑穀文化だった。
MILLET ONE の “MILLET” は、“雑穀”を意味している。
昔から日本人は、雑穀を“体を整える食べ物”として食べてきた。
白米だけではなく、自然の栄養を少しずつ取り入れてきた文化。
その考え方を、犬のごはんにも入れたかった。
国産の雑穀。
国産の生肉。
地元の野菜や魚。
“人の食文化”を、犬の食事にもつなげたかった。
しかも、ノンオイルコーティング。
油で香りを強くするのではなく、素材そのものの香りを大切にした。
先生からは、
「お出汁みたいな香りですね」
と言われた。
私は、その言葉がすごく嬉しかった。

「しつけフード」ではなく、“幸せトレーニングフード”

保育園でも、ミレワンは毎日のトレーニングで使われるようになった。
理由はシンプルだった。
割れる。
ベタつかない。
テンポが止まらない。
しかも、犬の集中力が続く。
普通のおやつは、香りが強すぎたり、油が多すぎたりする。
でもミレワンは、興奮しすぎない。
自然に集中できる。
しかも主食だから、毎日安心して使える。
先生は言った。
「これ、トレーニングにめちゃくちゃいいです」
それが、本当に嬉しかった。

「腸と心はつながっている」

私はHANAと暮らしていて、
“腸と心はつながっている”
のかもしれないと思うようになった。
お腹の調子が悪い時は、どこか落ち着かない。
逆に、毎日の便が安定し、体調が整うと、気持ちも穏やかになっていく。
だからミレワンには、1兆個の乳酸菌を入れた。
ただ栄養を満たすだけではなく、
“気持ちよく生きる”
ところまで支えたかった。
HANAは、ミレワンを食べるようになってから、本当に変わった。
下痢がなくなった。
毛艶が変わった。
口臭もほとんど気にならなくなった。
歯もきれいになった。
そして何より、毎日の便が本当に良くなった。
大型犬の飼い主ならわかると思う。
便臭や口臭が減ることが、どれだけ嬉しいか。

ミレワンは消化に優れお腹の負担を軽減。便臭にも配慮し健康をサポートするフードです。

「Animal Well-being」という言葉を、どうしても入れたかった

私は山口県立大学大学院で学んでいた頃、“ウェルビーイング”という考え方を知った。
ただ豊かになることではない。
心も、
体も、
社会とのつながりも、
すべてが調和している状態。
それがウェルビーイングだった。
その思想に、私は強く惹かれた。
そしてHANAと暮らし始めてから、ふと思った。
これは、人間だけの話なんだろうか、と。
犬が幸せだと、人も幸せになる。
そして、社会も少し優しくなる。
私はHANAと暮らし始めてから、今まで話したことのなかった人たちと、自然に会話するようになった。
散歩中に、
「大きいですね!」
と声をかけられる。
保育園で、犬の悩みを相談し合う。
公園で、知らない人同士が笑う。
犬がいることで、人と人がつながっていく。
それは単なる“犬好き同士の交流”ではなく、社会そのものが、少しウェルビーイングになっていく感覚だった。
だから私は、
「Animal Welfare」(アニマルウェルフェア)
だけではなく、
「Animal Well-being」(アニマルウェルビーイング)
という言葉を使いたかった。
ウェルフェアは、“守る”という意味合いが強い。
でも私は、その先を考えたかった。
犬も、
人も、
社会も、
共に幸せになっていくこと。
その未来を表す言葉が、私の中では“Animal Well-being”だった。
でも当時、そんな言葉は、まだ存在していなかった。
だから私は、大学院時代の恩師にも相談した。
すると先生は、
「今は意味が伝わらなくても、きっと時代が追いつく日が来る」
そう言ってくれた。
私はその言葉に背中を押された。
そして、ミレワンのコンセプトにそしてパッケージにも
「Animal Well-being」(アニマルウェルビーイング)
という言葉を入れることを決めた。
意味がわからないと言われるかもしれない。
でも、10年後にはきっと必要になる。
そう信じた。

世界はすでに、「栄養」から「幸福」へ向かっている

今、ヨーロッパや北欧では、
“犬の幸福は、食事・経験・人との関係がつくる”
という考え方が広がっている。
もう、
「栄養だけ入っていればいい」
時代ではない。
刺激的な香料で食べさせる。
油でコーティングして食いつきを上げる。
そういう時代から、世界は少しずつ変わり始めている。
腸を整える。
心を落ち着かせる。
自然な行動を引き出す。
人との関係性を良くする。
つまり、“生き方”そのものを支える食事へ。
それが、世界のウェルビーイング基準なのだと思う。

「Family Food®」は、私たちの覚悟だった

だからミレワンは、単なるドッグフードではない。
“犬用だから”
ではなく、
“家族だから”
という思想から生まれた。
だから私たちは、
Family Food®」(ファミリーフード)
という商標も取得した。

白は調和。
青は健康。
赤は家族の愛情。
その3つを、認証マークに込めた。
愛犬の幸せが、飼い主の幸せにつながり、社会全体の空気まで変えていく。
そんな未来を作りたかった。
食べ物は、単なる栄養じゃない。
人と犬、そして社会を、ウェルビーイングな未来へつなぐ文化なのだと思う。

ロットワイラー、おそるべし

見た目はいかつい。
体も大きい。
しかも、力が本当に強い。
でも、そんなHANAと暮らしながら、私は少しずつ、大型犬との暮らし方を学んでいった。
気づけば、犬が苦手だった私の人生は、完全に変わっていた。
そしてその変化は、いつしか、
“人と犬が、もっと自然に幸せに暮らせる社会”
を考えることにつながっていった。

HANAが毎日食べているごはん

アニマルウェルフェアの考え方から生まれた Family Food®「ミレワン」。
犬の保育園の現場でも使われている、“食べる楽しさ”と“学ぶ楽しさ”をつなぐ総合栄養食です。

次回予告

犬が、人と地域をつないでいった
――山を切り開いて、「犬の保育園」を作るまで

松浦奈津子とロットワイラー

執筆者

松浦奈津子

Lifestyle with Dogs 編集記者

元地域情報誌編集長。現在は株式会社Archis代表取締役。
長期熟成型ヴィンテージ日本酒「夢雀」、ドッグフード「ミレワン」、犬の保育園「ハッピーランドハレルヤ」を運営。

犬が苦手だったにもかかわらず、ロットワイラーHANAとの暮らしをきっかけに犬の世界へ。アニマルウェルフェアの考え方や、人と犬がともに幸せに暮らすヒントを発信している。