「ロットワイラーと暮らしています」
そう話すと、多くの人が少し驚いた顔をする。
- 「怖くないんですか?」
- 「女性一人で?」
- 「大変そうですね」
たしかに、そう思うのも無理はない。
ロットワイラーは、成犬になると50kgを超えることもある超大型犬。警察犬や護衛犬として活躍することも多く、“怖そうな犬”というイメージを持たれやすい犬種だ。でも実は、そんなロットワイラーと暮らしている私は、もともと犬が苦手だった。
しかも、人生ではじめて迎えた犬が、ロットワイラーだった。
犬との暮らし方も知らない。大型犬の知識もない。ましてや、アニマルウェルフェアという言葉すら知らなかった。そんな私の人生を変えたのが、ロットワイラーのHANAだった。HANAと暮らし始めてから、私は初めて知った。
- 犬には感情があること。
- 表情があること。
- 安心できる場所を求めていること。
- そして、人と犬は“共に生きる存在”なのだということを。
- 犬の保育園との出会い。
- アニマルウェルフェアという考え方。
- 大型犬との暮らし。
- 食と健康のこと。
- そして、“家族のごはん”として生まれたミレワンのこと。
怖いと思っていた犬が、いつしか、人生でいちばん大切な相棒になっていた。
これは、犬が苦手だった私が、ロットワイラーHANAと暮らしながら、少しずつ犬を知り、自分自身の生き方まで変わっていった記録です。そしてきっと、ミレワンという“家族のごはん”が生まれるまでの、いちばん最初の物語でもあります。そんな、ロットワイラーとの暮らしの物語を、少しずつ書いていこうと思います。

第1話|犬が苦手だった40代女性が、ロットワイラーHANAを迎えた日
――「その犬、本当に飼うの?」と言われながら始まった、超大型犬との暮らし
「その犬、本当に飼うの? 大丈夫? 無謀すぎない?」
ロットワイラーを迎えたことを話すと、何人もの友人がそう言った。
今ならわかる。たしかに、かなり無謀だった。
なぜなら私は、その時まだ、“犬が苦手な40代の経営者”だったからだ。
しかも、はじめて迎える犬がロットワイラー。
犬好きの人が聞いたら、少し驚く組み合わせかもしれない。
ロットワイラーは、成犬になると50kgを超えることもある超大型犬。力が強く、賢く、忠誠心が深い一方で、しつけや社会化がとても大切な犬種だと言われている。
世界では警察犬や護衛犬として活躍することも多く、“強い犬”というイメージを持たれることも少なくない。

近所の交番の前に座るのがお気にいり。お巡りさんとも仲良しなHANA
実際、散歩をしていると今でもよく言われる。
「怖そうですね」
「いかついですね」
「女性一人で飼ってるんですか?」
でも、実際に暮らしてみると、その印象は少し変わる。
ロットワイラーは、とても穏やかで、家族思いだ。
甘えん坊で、表情が豊かで、驚くほど空気を読む。
そして何より、“堂々としている”。
無駄に騒がない。どこか、自信がある。
でもその落ち着きの奥では、いつも家族を見ている。
周囲に目を配り、空気を感じ、静かに守ろうとしている。
私はHANAと暮らしてはじめて、“犬にも人格がある”と感じるようになった。
でも当時の私は、そんなことを何も知らなかった。

山で育った私にとって、犬は「怖い存在」だった
私が育ったのは、山口県の山深い町だった。
1000メートル級の山々に囲まれた、小さな集落。
同級生は1人。全校児童も10人ほどしかいない、小さな学校だった。
美しい清流、緑豊かな大地に囲まれ、本当に自然は豊かだった。
でも、そこにいた犬たちは、今の私が知っている“家族としての犬”とは少し違っていた。
犬は、猟犬だった。
イノシシを追い、山を走る犬。外につながれ、近づくと激しく吠える。
筋肉質で、張り詰めた空気をまとっていて、幼かった私には少し怖かった。
だから私にとって犬は、
「かわいい」
ではなく、
「近づかない方がいいもの」
だった。
犬が嫌いだったわけではない。
ただ、知らなかったのだと思う。
- 犬が何を感じているのか。
- どうすれば安心するのか。
- どうすれば信頼関係を築けるのか。
私は、犬という生き物を、ずっと遠くから見ていた。
でも、その理由を、本当の意味で理解したのは、ずっと後だった。
今年の春。
実家の近くに住む同級生のお父さんの家へ、久しぶりにイノシシの肉をもらいに行った時のことだった。
山の景色は、子どもの頃とほとんど変わっていなかった。
そして、そこには昔と同じように、猟犬たちがいた。
低く唸る声。張り詰めた空気。山を見つめる鋭い目。
そして、私がいる間、その犬たちは15分ほど、ずっと吠え続けていた。
本当に、ずっと。
まるで、
「知らない人間が来た」
と全身で警戒しているようだった。

実際の猟犬の写真
でも、その時の私は、以前とは少し違っていた。
昔なら、
「怖い」
だけで終わっていたと思う。
でも私は、その犬たちの近くへ行って、しばらく見ていた。
この子たちは、何を考えているんだろう。
どうして、こんなに吠えているんだろう。
3頭いた猟犬たちは、それぞれ少し違って見えた。
1頭は、どこか好意的に見えた。
「かまってほしい」
そんなふうにも見える。
もう1頭は、明らかに警戒していた。
「ここへ来るな」
と威嚇しているようにも感じた。
そして、もう1頭は、正直よくわからなかった。
でも、みんな違う。
同じように吠えていても、それぞれ感情が違う気がした。
HANAみたいな笑顔は、そこにはなかった。
でも私は、その時初めて思った。
この子たちにも、きっと心があるんだ、と。
そう思ったら、なぜかその場から離れられなかった。
その瞬間、私はふと気づいた。
「ああ、私は、この犬たちを見て育ったんだ」
と。
犬が怖かったのではない。
“犬との暮らし”を知らなかったのだ。
- 家族として甘える犬も、
- 安心して眠る犬も、
- 人に寄り添う犬も、
私は知らなかった。
犬は、“山で働く存在”だった。
だから距離感がわからなかった。
でもHANAと暮らした今ならわかる。
犬は、本来とても感情豊かで、愛情深い生き物なのだと。
今年の春、私はようやく、自分が犬を苦手だった理由を理解した。
そして少しだけ、昔の自分を許せた気がした。

笑顔のロットワイラー HANA
はじめて迎える犬が、ロットワイラーだった
そんな私が、ある日突然、ロットワイラーと暮らすことになった。
しかも、犬初心者。
知識も、覚悟も、準備も、ほとんどないまま。
今思えば、かなり大胆だったと思う。
そもそも私は、ロットワイラーという犬種をほとんど知らなかった。
聞いたことすらなかった。
山口県では、同じ犬種に出会うことはほとんどない。
今でも散歩をしていると、高い確率で声をかけられる。
「何犬ですか?」
「はじめて見ました」
そのたびに私は、
「ロットワイラーです」
と説明している。
それくらい、日本ではまだ珍しい犬種なのだと思う。

ロットワイラーのルーツは古く、ローマ時代まで遡るとも言われている。
ドイツ原産で、かつては牛を追い、荷車を引き、人と共に働いてきた犬。
特に有名なのが、“肉屋の犬”としての歴史だ。
市場へ向かう肉屋たちは、売上金の入った袋をロットワイラーの首につけていたと言われている。
「この犬から盗めるものなら盗んでみろ」
そんな“金庫犬”のような存在だった。
海外では今でも人気が高く、“家族を守る犬”として愛されている。
見た目はかなり強そうだ。
筋肉質で、大きくて、黒くて、顔も迫力がある。
うちにHANAがきた後、インターネットでロットワイラーについて調べた時、
「こんな犬を、本当に私が?」と現実を受け入れられなかった。
そしてその頃の私は、ロットワイラーがどれほど特別な犬なのか、まだ何も知らなかった。

HANAがうちにきた日
「本が書けます!」
はじめてドッグトレーナーの先生に会った時、私は正直に言った。
「実は、犬が苦手で……」
「最初の犬が、ロットワイラーなんです」
すると先生は、一瞬目を丸くして、こう言った。
「本が書けます!」
私は思わず笑ってしまった。
でもあとから聞いた話では、犬の保育園でも少しざわついていたらしい。
「ロットワイラーが来るらしい」
しかも先生自身も、何万頭と犬を見てきた中で、ロットワイラーを子犬から見るのは初めてだったという。
HANAはやがて50kgを超える犬になる。
しかも筋肉質なので、数字以上に重い。
ゴールデンレトリバーやスタンダードプードルのお友達の方が、毛がふわふわして大きく見えることもある。
でも実際には、HANAの方が重いことが多かった。
そんな犬を、犬が苦手だった私が迎えた。
先生が「本が書けます」と言ったのは、笑い話のようでいて、きっと半分は本気だったのだと思う。

パピーの頃のHANA
「今すぐ来てください」
HANAを迎えてすぐ、私は友人に相談した。
すると返ってきたのは、迷いのない言葉だった。
「絶対に、ちゃんとしたトレーナーに見てもらった方がいい」
紹介してもらった先生に電話をした。
「ロットワイラーで、3カ月です」
そう伝えると、先生は即答した。
「今すぐ来てください」
私は驚いて、
「もし難しければ、来週でも……」
と伝えた。
すると先生は、はっきり言った。
「その1週間が大きいんです」
「パピーの1日は、本当に大事なんです」
その言葉に、私は背中を押された。
予定を何とか調整し、翌日、会社の副社長と一緒にHANAを連れて向かった。
今思えば、あの日がすべての始まりだった。

HANAと副社長
「横につけて歩かなくていいんですよ」
その頃の私は、犬の散歩とは、“横にぴったりつけて歩かせるもの”だと思っていた。
大型犬だからなおさら、ちゃんとコントロールしないといけない。
ちゃんと言うことを聞かせないといけない。
そう思っていた。
でも先生に言われた言葉がある。
「人間でも、ずっと横にぴたっと歩けって言われたら嫌ですよね」
私は思わず、
「たしかに……」
と思った。
犬は、匂いを嗅ぎたい。
立ち止まりたい。
草むらに行きたい。
風を感じたい。
犬にとって散歩は、ただ歩く時間ではなく、“世界を感じる時間”なのだと教えてもらった。
私はその時、初めて犬を「管理する存在」ではなく、“感情を持った生き物”として見始めた気がする。
ロングリードの使い方も教えてもらった。
- 自由に走る時間。
- 満たされる時間。
- 自分で考える時間。
それが増えるほど、不思議なことにHANAは落ち着いていった。
ロットワイラーだからこそ、厳しく抑えないと危ないと思っていた。
でも実際には、安心できる時間が増えるほど、HANAは穏やかになっていった。
私はそこで初めて、
「犬を支配する」のではなく、
“犬を理解する”
という考え方を知った。

保育園に初めて預けた日のHANA
HANAが教えてくれた、「命」の感覚
HANAを迎えて間もない頃のことだった。
家の近くを散歩していると、HANAが突然、道路脇の溝をじっと見つめ始めた。
動かない。
何かに反応している。
「どうしたの?」
そう思って近づき、ブロックの隙間をのぞき込んだ瞬間、私は思わず声を上げた。
目が合った。
そこにいたのは、アナグマだった。
暗い溝の下から、こちらをじっと見ていた。
次の瞬間、アナグマはサッと走り出し、そのまま溝の奥へ消えていった。
私はしばらく、その場を動けなかった。
そして、ふと思った。
HANAは、少し前まで他人だった。
昨日までは、家族じゃなかった。
でも、うちに来たその日から、一緒に暮らす家族になった。
毎日ごはんを食べて、ベッドで眠って、名前を呼ばれて、生きている。
でも、あのアナグマは違う。
アナグマとして生まれ、暗い溝の下で眠り、野生の中で生きている。
もしHANAが野生だったら。
もし、あのアナグマが家で暮らしていたら。
同じ命なのに。
その違いは、何なんだろう。
私はその時、自分でも不思議なくらい、ぼんやりとそんなことを考えていた。
今まで、動物を見て、そんな感情になったことはなかった。
でもHANAと暮らし始めてから、私は少しずつ、“命を見る感覚”が変わっていった気がする。

365日一緒にいると、わかることがある
365日一緒にいると、だんだんわかってくる。
「あ、この人には吠えるかもしれない」
HANAは言葉を話さない。
でも、耳の動き、視線、歩くスピード、体の張り方。
その小さな変化で、空気がわかる。
だから私は、少し距離を取ったり、リードを短く持ったり、先に気持ちを整える。
すると、たとえHANAが
「ガオー!」
となったとしても、こちらが構えているので不思議と大丈夫だったりする。
犬をコントロールするというより、“会話している感覚”に近い。
ここまで来るには時間がかかった。
でも今は、HANAと阿吽の呼吸で歩いている感じがする。
散歩というより、相棒との時間だ。

HANAは、本当に人間みたいな犬だった
HANAは、とにかく表情が豊かだ。
嬉しい時は、全身で笑う。
いたずらした時は、“わるい顔”をする。
しかも、ものすごく空気を読む。
散歩中に電話がかかってくると、伏せをして待ってくれる。
「ちょっと待ってね」
と言うと、本当に待つ。
「今日は維新公園に行くよ」
と言うと、車の方へ向かう。
「今日は近所を歩こうね」
と言うと、そのコースへ進む。
友達の名前を覚えていて、
「あけみが来るよ」
と言うと、玄関の方で待ち構えていたりもする。
本当に、言葉を理解しているのではないかと思う瞬間が何度もある。
ロットワイラーは、勘が鋭い。
警戒心も強い。
だからこそ、家族をよく見ている。
そして何より、優しい。
歩くのが速いので、先に行ってしまうこともある。
友人との散歩で、こちらが少し前まで行くと、必ず振り返る。
「ちゃんと来てる?」
そんな顔をして、友人を待っている。
気遣いができて、優しくて、頼もしくて、少し不器用で。
でも愛情深い。
しかも後ろ姿は、意外とかわいい。
ロットワイラーのおしりは、なぜかハート型に見える。
あの“いかつい顔”とのギャップが、ずるい。
可愛いと、かっこいい。
HANAは、その両方を持っていた。

ハートのお尻がチャームポイント
「全国ニュースになります」
トレーナーの先生に言われた言葉の中で、今でも忘れられないものがある。
「もしHANAのリードを離して、何かあったら、全国ニュースになります」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥がひやっとした。
ああ、私は本当に大変な犬を迎えたんだ。
かわいい。大切。家族。
それだけでは足りない。
ロットワイラーと暮らすということは、愛情だけではなく、“責任”を持つということなのだと、その時はじめて実感した。
だから私は、今でも決めている。
どんなことがあっても、この手だけは離さない。
たとえ転んでも。
たとえ引っぱられても。
たとえ周りから驚かれても。
この手だけは、絶対に離さない。
HANAが、ミレワンの始まりだった
HANAと暮らし始めてから、私は“食”についても深く考えるようになった。
最初の頃、HANAは下痢や軟便が多かった。
便臭も強く、口臭も気になっていた。
大型犬だからこんなものなのかな。
犬ってこういうものなのかな。
最初は、そう思っていた。
でもある日、衝撃を受ける出来事があった。
朝、おやつとして食べたフードが、夜、HANAがむせた瞬間に、そのままの形で出てきたのだ。
しかも4粒、ほぼ原型のまま。
私は目を疑った。
「え……消化できてない……?」
その瞬間、本当に怖くなった。
この子の体に、負担をかけているのではないか。
毎日食べるものなのに、本当にこれでいいのだろうか。
その疑問が、ミレワンの始まりだった。
“家族であるHANAのために、心から安心してあげられる、ごまかしのないごはんを作りたい”
そう思った。
試作と調整を重ねながら、HANAに与え続けた結果、少しずつ変化が起きていった。
下痢や軟便が減り、便の状態が驚くほど良くなった。
口臭や便臭も、ほとんど気にならなくなった。
毛艶も艶々になっていった。歯もきれいな状態がずっと続いた。
なにより嬉しかったのは、HANA自身が、とても穏やかに、気持ちよさそうに過ごしていたことだった。
私はそこで初めて、
「食べ物は、体だけじゃなく、心にもつながっている」
ということを実感した。

愛犬の健康を支えるごはん MILLET ONE(ミレワン)

犬が苦手だった私の、新しい人生
犬が苦手だった私が、ロットワイラーと暮らすことになった。
今でも不思議に思う。
でもHANAは、私の人生に突然現れて、少しずつ世界の見え方を変えていった。
怖いと思っていた犬は、本当は、向き合い方を待っている存在だった。
知らなかった犬種は、私に責任と覚悟を教えてくれる存在になった。
そしてただの暮らしは、いつしか“共に生きる”という学びに変わっていった。
これは、犬が苦手だった私が、ロットワイラーHANAと暮らしながら、少しずつ犬を知り、人を知り、自分の生き方まで変えられていく記録です。
そしてきっと、ミレワンという“家族のごはん”が生まれるまでの、いちばん最初の物語でもあります。

HANAが毎日食べているごはん

アニマルウェルフェアの考え方から生まれた Family Food®「ミレワン」。
犬の保育園の現場でも使われている、“食べる楽しさ”と“学ぶ楽しさ”をつなぐ総合栄養食です。
「次回予告」
次回、
「犬が怖かった私が、初めて“かわいい”と思えた日」
ゴールデンレトリバーに、私は初めて自分から手を伸ばした。

執筆者
松浦奈津子
Lifestyle with Dogs 編集記者
元地域情報誌編集長。現在は株式会社Archis代表取締役。
長期熟成型ヴィンテージ日本酒「夢雀」、ドッグフード「ミレワン」、犬の保育園「ハッピーランドハレルヤ」を運営。
犬が苦手だったにもかかわらず、ロットワイラーHANAとの暮らしをきっかけに犬の世界へ。アニマルウェルフェアの考え方や、人と犬がともに幸せに暮らすヒントを発信している。